インプロビゼーション(即興演奏)とは、演奏者の解釈で自由に演奏すること。ジャズにおいてはこのアドリブに大きなウエートが置かれているため、演奏者の持ち味の発揮の場所となっている。
そう、正にこの映画はインプロビゼーションです。
脚本を作らず、即興演出の作品。
兄ヒューの職業がジャズシンガーであること、弟ベンがトランペット奏者になりたいと作中で語っているところは、この作品自体がジャズの即興と同じであることを匂わせてますな。
その演出が功を奏したか、居心地が悪くなる歯切れの悪い会話が作品にアクセントを利かしている。妙にリアルなんですよね。
ニューヨークに暮らす、兄ヒュー、弟ベン、妹レリアの兄妹には黒人の血が流れている。ヒューが黒い肌であるのに対して、ベンとレリアは外見は白人と見分けがつかない。
時代背景を理解して見なければいけないのですが、これは奴隷解放宣言前の映画なんです。
外見からして黒人である兄は、あからさまな差別を受ける。弟と妹は、そうではない。しかし背負っているものは、ひょっとすると兄より重たいかも知れない。
長編デビュー作にして、脚本なしとは、恐れ入りました。