Omizu

最後の億萬長者のOmizuのレビュー・感想・評価

最後の億萬長者(1934年製作の映画)
3.9
【1935年キネマ旬報外国映画ベストテン 第1位】
『自由を我等に』『リラの門』などのルネ・クレール監督作品。カジナリオなる架空の国家で繰り広げられる社会風刺コメディ。

ルネ・クレールの流麗でスッキリした画面と鋭い風刺が効いた傑作コメディ。かなり楽しめた。

カジノで財政を補っている裕福な国カジナリオ、その余裕にかまけて減税などを行った結果財政は悪化。それを改善するためにカジナリオ出身の富豪バンコ氏と王女イザベルを結婚させようとするが…

クレール作品はハリウッド時代のアガサ・クリスティ原作『そして誰もいなくなった』しか観ていないと思う。そちらはミステリーと相性が悪かったのか微妙な出来だったけど、この作品のような喜劇でこそ実力を発揮する作家なのだなあと見直した。

国歌しか演奏できない宮廷楽団や、中盤頭を打っておかしくなったバンコ氏が出すトンチキ法律がなんともおかしい。家臣に犬のまねをさせたり、ヒゲのある男性は休日短パンで散歩しなければいけない、とか。

利用されるだけのバンコ氏が可哀想に思うけど、終盤正気に返ったバンコ氏の痛快なやり返しがおもしろい。

短いのもいいね。スッキリとまとまった、でも痛烈に社会を皮肉った傑作コメディ。
Omizu

Omizu