てづか

虹の橋のてづかのレビュー・感想・評価

虹の橋(1993年製作の映画)
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映画の中で起こっている事態だけをみると、まあ結構みんな辛い目にあっているんだけどテンポがいいからか鈍重さや野暮ったさは感じず。むしろそういう辛い中でも歯を食いしばって強く生きている姿が描かれていると思った。
子供が奉公に出されて無給で働いていることもそうだけど、妹が女郎屋に売られないために人を殺して死んだ兄がいるのに、その想い人は生きるために女郎になるしかなかったというところも、ままならない人生の中でもその場所で生きていくしかないということをあらわしてるんだろうなと思った。
嘆願したって、人は死ぬ。

そういう色んな人の立場からものごとを描くというところが群像劇の好きなところで、辛いのなんか自分だけじゃないという自戒にも感じられるから私は群像劇が好きなのかなとも思った。
世界中で自分が一番不幸だと思う瞬間はたくさんあるし、その瞬間は自分の中では本当にそうだし、その痛みなんかは自分だけのもので誰とも分かち合えたりはしないんだけど、
そんなのみんなそれぞれ抱えてる。形は違えどね、という気持ちにもなる。そこが、群像劇の好きなところ。
世界には色んな人がいるってことを知るのはやっぱり大事だなあと思う。だから、色んな世界をみたいとも思う。それが映画を観たいという気持ちにも繋がっているような気がする。

メインで描かれる千代と宗吉のラブストーリーも、結局はそういう色々を通して世間を知って大人になった千代が宗吉を拒絶するという結末になる。
お互いに好きという気持ちはあっても、誰かを思って諦められなきゃ大人になったとは言えない。
そこの解説を受けてすごく自分にも刺さった。
そういう選択ができるようにならなきゃと、


あと、映画の全体的なテンポとか流れはちゃきちゃきしている感じがあって観ていても気持ちがいい。一つ一つのカットの美しさもあって、通りをいろんな色の傘が歩いていくところや雪の中でたたずむ2人の少女、などはとても印象的だし日本ならではの光景なのかなって感じた。

役者さんたちもすごく良かった。
渡部篤郎ってもっとスカしたイメージの人だったからこんな役もやってたんだなあという驚き。
顔が今と全くおなじな北大路欣也とか、どのシーンでも表情がいい渋谷琴乃さんとか、目が印象的な和久井映見さんとか、どっからどう見てもアホなボンボンにしか見えない佐野史郎とか。

今ではあまり観られる機会もないような作品を観ることが出来て、とても貴重な映画体験だった。

こういう、時代の流れとともに人に観られなくなってしまっている映画はこの世に沢山あるのだと思うし、そういう映画こそをできる限り観てみたいので、ひとつのところに留まるのではなく色んな映画を観ていきたいなと今は思っている。
てづか

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