けんたろう

好色一代男のけんたろうのレビュー・感想・評価

好色一代男(1961年製作の映画)
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中村玉緒のせいでFilmarksのジャンルがホラーになっているおはなし。


口を開けば「おなご」「おなご」と言う、ただの色気狂いな放蕩息子に思われた世之介(市川雷蔵)が的を射たことをペラペラと喋るのが、何んとも痛快で楽しい。
むろん彼は聖人君子というわけでは決してないため、舌をクルクルと回して披露される彼の論理は、つまるところ己の欲望を正当化しているに過ぎない。(実際彼の論理は"オカマ"や婆さんにひどく厳しい。)しかしそれは、江戸時代の日本の醜い部分に会心の一撃を幾度となく喰らわすのだ。これが全く面白い。

その彼の目を通して、女が不幸せになるこの国の有様はコミカルに描かれ、既成の巨大な価値観に真っ向から対立する増村イズムは大爆発。

「嫌や。」「嫌や。」「嫌や。」
「侍なんてアホや!」

ひょろっこくて弱々しいが、しかし日本などという小さな島国なんぞには収まりきらぬ、なにか太くて大きなものを感じた。このたとえが的確かどうかは少々自信がないが、僕にはこれが、まるで大河ドラマ『龍馬伝』のように思えた。