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雄呂血のzoeのレビュー・感想・評価

雄呂血(1925年製作の映画)
3.8
阪東妻三郎プロダクションの第一作目。こちらも松田春翠さんによる活弁入りを鑑賞しました。

お話はざっくり言うと、本当は善人である主人公がその善意が裏目に出てしまい、世間に極悪人扱いされてしまうというなんとも悲劇的な内容。

これは観る人によって異なると思うけど、私は彼に共感できず、同情しそうにはなるけど結局できなかった。主人公に感情移入することは一時もありませんでした。

平三郎はとても良い人なんだろうと思う。それと同時に良い意味でも悪い意味でもあまりにも感情的で本能的だと感じた。

血濡れた顔で人を斬ってしまったことに気づき、必死で手から刀を引き離そうとする彼の絶望的な表情はとても憐れだった。

「くわばらくわばら」って久々に聞くと、やっぱりなんだか癖になる響きだな~と思って、最近母と使ってます😂


これまで、小津監督の『生まれてはみたけれど』を始め、マツダフィルムライブラリーの作品を多く鑑賞しました。毎回、本編開始前に松田映画社の創立者であり、活弁士でもある松田春翠さんについて言及されます。こうして100年以上前の作品を今も観ることができるのは、松田さんが戦禍と戦後の占領中の没収から守り抜き、国内だけでなく国内外からも発掘収集してくれたお陰で、その執念と努力にはとても感謝してもしきれないほどです。そして、彼の意志に賛同し、彼の意思を継ぎ、サイレント映画を多くの人のもとに届けてくれた全ての人に感謝します。
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