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樹氷のよろめきのJeffreyのレビュー・感想・評価

樹氷のよろめき(1968年製作の映画)
3.8
‪「樹氷のよろめき」‬
冒頭、厳冬の北海道。札幌で美容院を経営する女。車がオーバーヒート、原野の果てし無い道。ニセコ、粉雪、海上のボートでの妊娠告白、雪山が聳える風景、冬化粧、ひとつの死体…本作は吉田喜重と女のみづうみで協力した石堂淑朗と脚本を執筆したオリジナル作で、現代映画社四作のラストを飾る岡田茉莉子主演の一本だ。物語は札幌で美容院を経営する百合子。愛人の高校教師杉野と旅に出た。それは彼女が彼と別れる最後の旅…そこへ彼女の昔の恋人今井が現れ、彼女を挟んで杉野と今井が対立する。軈て一面雪の中で事件が起きる…いや〜これは完璧なまでに旅映画である。ヴェンダースとは対照的なロードムービーだ。これはヤラレタ…完璧過ぎる。歳が一回り違う男女とそこに現れた昔の恋人により、奇妙な三人の北海道を巡る旅が繰り広げられる。こんな葛藤した旅、これぞ人生最大の目的の一つなんじゃないか…肉体、嫉妬、過去、愛と憎、そして雪に閉ざされたニセコの小宇宙感…この三人のみを捉えた事による純化する物語、三者が織り成すドラマ、日本最高のロードムービーではないか。製鉄所から出る真白な煙に向かって歩く男女の姿、今迄、前衛的で不気味な音楽を作曲していた池野成が印象深いメロディを奏でる点や従来の着物姿の主人公岡田茉莉子がコートにセーター姿で登場するのは前作らと違くて面白い。着物姿以外の岡田の魅力を堪能できる。無論、女のみずうみではジャケット姿を披露しているが…。だが象徴的な日傘は封印された。にしてもあの雪山を這い上がるシーンは役者にとっては大変だっただろうと思う。極寒の北海道でのロケは辛い。ラスト雪山の見晴らしの良い所での三角関係の会話の後に手持ちカメラが揺れ、男の叫び声が鳴り響き、一面雪景色の白一色に◯◯を引き摺る男女のロングショットは堪らなく最高。白銀に輝く愛憎物語として最高レベルに面白い一本だ。‪役者も素晴らしいし、監督が見る、感じる女性像がこの反メロドラマにある情念によって理解出来る。素晴らしい!‬
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