アーリー

リトル・ブッダのアーリーのレビュー・感想・評価

リトル・ブッダ(1993年製作の映画)
3.5
2023.1.14

ベルトルッチのオリエント三部作最終章。「ラストエンペラー」を観れてないのが痛すぎる。

とある僧侶の生まれ変わりだと言われた少年が、少しずつ仏教の世界に足を踏み入れていく。それと同時に今でいうブッダ、シッダールタがどうやって悟りを開いたのか、なぜ悟りを開こうとしたのかが並行して描かれる。
 仏教の世界観をひたすら追いかけていくような内容。それをアメリカ人の少年やその父親の目線で進むのが面白い。キリスト教とは全く考え方が違うものを、どう受け入れていくのか。一つのものの考え方として、仏教を学ぶのは結構面白い。人はいつか死ぬ。死ぬために生まれてきた。生まれてしまったからには絶対死から逃れられない。それを苦悩と表現して、そこから乗り越えようとする。生まれ変わりの話がよく出てくるけど、生まれ変わる循環こそ苦悩であるし、輪廻転生から逃れることが安らぎをうむ。なんというか凄い落ち着いた考え方をしてるなぁ。瞑想なんて絶対できひん。とても苦しい生活の中生まれて、考えることしか娯楽という娯楽がなかった人たちが作っていった考えが仏教なんかな。いつか死ぬんだというテーマは前作「シェルタリングスカイ」でも扱われてた。

場所によって映像の色味が全然違う。シアトルの映像は暗くて冷たい感じ。これは少年ジェシーがまだ目覚めてないことを表してるのか。仏教関連の建物であったり、スーダンでの映像は逆に暖色系で暖かい映像に変わる。そこから伝わるあったかさや緩さが、仏教のイメージとよく合ってる。

キアヌがこんな役やってたなんて知らんかった。ガリガリに痩せてるシーンがあって、俳優としての気合を感じる。ブッダを描いた作品は初めてやったから結構新鮮な気持ちで見れたけど、白人であるキアヌがシッダールタを演じたことに対して批判とかなかったんかな。
 ベルトルッチがこれを撮ろうとした背景も気になる。「1900年」から明らかに作風が変わってるし、政治とか性というテーマがもうない。イタリア感もフランス感もないし、ストラーロの映像美と、坂本龍一の音楽で作り上げられた世界観に案内する人みたいになってる。

映画的面白さはそこまでない。新しく未知の考え方に出会った時、人はどう変わるのか。そんな副題があるように思えたが、そこまではっきり答えが出るわけでもなく。仏教に関して色々考えることが出来たのは良かった。
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