takato

斬るのtakatoのレビュー・感想・評価

斬る(1968年製作の映画)
4.3
 岡本喜八版「用心棒」。痛快娯楽活劇という言葉がピッタリな傑作。前々から気になっていたがNetflixで配信されたので鑑賞。


 「用心棒」や「椿三十郎」はみんな大好きだし、本作のが個人的には好きかも。とにかくテンポがよく、キャラがぶっとい線で描かれていて実に立っている。仲代さんといえばギョロっとした目を活かしたクールで凄味のある演技が多いが、喜八さんことキハっちゃんが呼んでいた仲代さんの愛称モヤのボ〜っとした感じを本作でも見事に活かしており、作品のユーモア高めている。


 そしてもう一人の主役といっていい高橋悦史さん演じる百姓あがりの侍という、どう考えても「七人の侍」の菊千代を思わせる田畑半次郎のキャラが素晴らしい。このキャラを中心に作品全体に通底する明るい侍否定、というか組織人否定のテーマが描かれているし、菊千代以上にユーモラスで格好悪い親しみやすさがいい。


 組長の嫁さんを守るために唐突に大黒柱を持ち上げてみせるシーンや、土の匂いがする娘だぁ〜と大喜びするシーンも理屈を超えたとにかくエネルギーと明るさに満ちていてある意味主役の仲代さんと同等以上の輝きを示している。


 クライマックスが百姓たちの祭りと一緒になるとか、ラストの遊女たちの件とか、インテリでシリアスな黒澤さんとは全然違う、地に足のついた庶民の活力と野放図なユーモアの味がする喜八さんの魅力が冴え渡っている。喜八さん作品でも特に好きな一本かも。それにしても、Netflixの画質が非常に良くて、白黒の美しさがよく堪能できるのでおすすめです。
takato

takato