暗いテーマの中に、朗らかな明るさがある岡本喜八映画が好きだ。
テンポのいいギャグの数々!炸裂する高速カットバック!「江戸から大目付が来たぞ〜!!!」と叫び、一同静まり、振り返るも何も起こらない、あの一瞬の間合いが最高。
狂言回しの充実っぷりがこの映画の満足度を引き上げる。
家老の森内が、高貴な次席家老・鯵沢と好対照で俗っぽいのがたまらない。鯵沢は茶室で雅に時を過ごすが、森内は欲望のまま、女郎屋に住みたいとのたまう。
あー面白かったで終わらないのが喜八映画の真骨頂。
後ろに流れるテーマには時代性を感じる。時は学生運動の直後。
資本家と労働者(学生)の階級闘争が意識された時代。それを見事に武士と農民に置き換えて暗示している。
日本人全員が、学生闘争していたわけではなく、当事者ではない人が大多数だ。
よって、そのどちらにもつかない男(仲代達也)を主人公に据え、観客を置いていかない工夫も。
主人公の相棒、半次郎は「百姓一揆で虫けらのように村人が殺された、だから俺は侍になる」と言う。
戦時中に虫けらのように死んだ兵たちの暗示か?
憧れの侍たちも、お偉いさんに良い様に使われている。
「何が若き力だ!若き血潮だ!」
大人にいいように使われ、改革に敗れた全学連の学生たちの叫びと重なる。
脚本の構造は同時代の時代劇の影響多数。
ライバルが敵味方に分かれる
→座頭市
砦に立て篭もる
→隠し砦の三悪人
戦う七人
→七人の侍
2つの組織の間で暗躍する
→用心棒
時代劇の良いところ詰め合わせセット!岡本喜八映画の何事にも動揺せず、飄々とした主人公に熱くなる。
ただ、飄々としていた仲代達也が一度だけ、信念を問われるシーンで「斬る!」と言い切るシーンがあり、とてもカッコいい。英題もKillなのが洒落てます。