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パレスチナ1948・NAKBA(ナクバ)のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

4.8
パレスチナについてさらに知りたくなって。パレスチナ人迫害と虐殺の実態を取材した日本人ジャーナリストのドキュメンタリー。ユダヤ人入植で消えた村は420はあるといわれ、その内250を長期に渡って取材している。

この日本人ジャーナリストはさることで私も名前は知っていた。でも作品と作者は別と考えたい。これだけの作品を観ないのはもったいない。(その件についてジャーナリストの手記はnoteにあり読んでいる最中)

若い頃にイスラエルのユダヤ人のキブツにボランティアとして数年滞在していた時に、破壊されたパレスチナ人の村の上にユダヤ人が住んでいることに気づいた。それがジャーナリストになるきっかけでもあったという。

ユダヤ人が入植し、パレスチナ人の村は爆破され、人びとは追い出された。それは虐殺も伴っていた。この1948年の出来事をパレスチナ人は「ナクバ(大惨事)」と呼ぶ。

迫害されたパレスチナ人の取材と並行して、考え方の違う4タイプの以下のユダヤ人に取材している。

もともとキブツ、つまりユダヤ人側にいたジャーナリストであり、キブツのユダヤ人の取材から始まる。広大な土地は富裕なユダヤ人から買ったと信じているその地にいたユダヤの人びと。村を取り返しにアラブ人がやってくると、ホロコーストからの生還者の子どもたちが怖がるという。被害者意識があった。

ユダヤ人の中でパレスチナ人迫害に反対する活動家たちへの取材。日本人ジャーナリストはこの活動家たちと若い頃、キブツの後に行動を共にしていた。人権擁護の政治活動家や知識人となっていた。

ユダヤ人の中のナショナリストへの取材。博物館もまた半分壊されたパレスチナ人の石の家屋を'意匠'として意図的に使っている。

宗教や民族関係なく、弾圧される側の味方になるというイスラエル人。


この4タイプのイスラエル人の取材の間に、迫害されたパレスチナ人を多数取材し、パルチザンで6年間収容されていた少女とその妹を長年追いかけている。


ユダヤ人についてはホロコーストの被害者の印象が強いが、パレスチナで行っているシオニズムはユダヤ人によるナショナリズムであり、民族浄化と差別による弾圧と虐殺の歴史だった。


かつてあった破壊された村に戻り、自生している豊かな実りを摘み、墓地に参るパレスチナの一族、懐かしそうだった。簡単には行き来できないので特別な取り計らいだったのだろう。

非常に貴重なドキュメンタリー。
イスラエルへの見方が変わってくる。
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