ほーりー

ひろしまのほーりーのレビュー・感想・評価

ひろしま(1953年製作の映画)
3.9
この映画に描かれているのは、まさに地獄である。

去年の八月、NHK Eテレで放映されたデジタルリマスター版を録画したが、あまりにも悲惨な映像に何度も途中で停めてしまい、結局、感想文を書くのがのびのびになってしまった。

戦争の悲惨さを訴えるためには二種類のアプローチがあると思う。

一つは『二十四の瞳』のように直接的な描写は避けて戦時下における人間ドラマを描くことによって訴えかけるアプローチ。

もう一つは戦争の悲惨な状況をストレートに描写すること。本作は後者に当たる。

「いかにしてあの八月六日を正確に再現するか」

これが製作陣が目指した目標だったという。

原作になった長田新編纂『原爆の子』は、元々新藤兼人が前年に同じタイトルで映画化したが、ドラマ風にアレンジしすぎたのを製作の日教組が反発し、本作はその反省(?)を活かして作られたという。

という訳で本作の登場人物にはみな特別なドラマはない。ただあの八月六日に広島にいただけの普通の人々である。

その放射能がやがて人々の身体だけではなく、心までも蝕んでいく過程もストレートに描いていた。

メーキャップもさることながら、演者たちの鬼気迫る表情が忘れられない。

山田五十鈴、加藤嘉、月丘夢路、子役たちの無念の表情が脳裏から離れられない。

特に山田と月丘は元の顔が美しい分、後半、爆風によって血や煤まみれになった顔を見るのが辛かった。

音楽は伊福部昭。『ゴジラ』で焼け野原になった東京のシーンに流れる悲壮なメロディーが実は本作の転用であることにちょっとびっくりした。

■映画 DATA==========================
監督:関川秀雄
脚本:八木保太郎
製作:菊地武雄/伊藤武郎
音楽:伊福部昭
撮影:中尾駿一郎/浦島進
公開:1953年10月7日(日)
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