グレートムービーズ

鮮血の美学のグレートムービーズのレビュー・感想・評価

鮮血の美学(1972年製作の映画)
3.5
これは非常に変な映画である。
ストーリーは、二人の女子大学生が4人の悪党に襲われるという話。そこから偶然が重なり、残酷な復讐劇へと発展していく。無垢な善人が、悪人にねじ伏せられ、いじめられる光景はいつ見ても辛いものがある。特に今回は、見るに堪えないほど痛々しい。女子大学生が震える声で涙ながらに慈悲を請うのを見て、ナイフをちらつかせながら笑う4人は、観客の予想より数倍ひどいことを淡々としてみせる。そして、粗いカメラが、逃げずにそれを着実に映し続け、音声はその音を拾い続ける。
特に、女子大生の体にナイフで文字を刻むシーンがあり、このときの彼女の表情、叫び声がリアルで、かなりきつかった。
もちろん、それだけでは終わらず、4人にはちゃんと報いがやってくる。この展開は心がすっとし、声に出して笑うところもあった。
だが、これだけではまだ普通の映画の領域にとどまっている。なぜ本作が変なのかというと、壮絶な内容と相反して、非常にとぼけたゆる〜い雰囲気が全体を通して漂っているからだ。サントラとして謎の陽気なフォークソングがかかる。悪人達の日常会話もどこか馬鹿らしい。そして、一番衝撃的だったのが、合間合間におっちょこちょいの警察官二人組のコントのようなやりとりが挟まれる。しかもそんなに面白くない。
例えば、パトカーのガソリンを切らしてしまった彼らが、養鶏場のトラックに乗せてほしいと交渉しているところを延々見せ続ける。
これらにより、激辛カレーと大福を混ぜたような、非常に奇妙な舌触りの映画が出来てしまっている。
それが良いか悪いかは別にして、本作が印象に残る映画であることは間違いない。