楷書体で描かれたB級映画、いやB級というジャンルでは最高峰の作品ではなかろうか。古い白黒時代のSF映画だからといって(そして邦題の古めかしさからといって)、この映画を甘く見てはいけない。
冒頭、放心状態の少女がコワレタ人形を抱き、砂漠をひとりさまよい歩くこのシーンだけでも、見事に観客の心を惹きつけるパワーがある。一体、これから何が起こるのだろうと…
「カナカナカナカナカナカナ…」
砂漠に不気味なひぐらしのような鳴き声が響き、砂塵と共に不気味な黒い影が蠢くとき、人々は未だ経験したことのない恐怖のどん底に陥れられるのである(なーんてね)。
偶然にも我が国の「ゴジラ」が制作されたと同じ1954年に、放射能をテーマにしたこんな映画がアメリカにもあったのです。ただ被爆国の当事者である日本とは違い、最後の反核のメッセージもどこか淡々としている。その点も含めて本当にB級映画らしいのだ(逆に「ゴジラ」はそうでないから、第一級の映画であるとも言えるのだが)。