ひろぽん

鍵泥棒のメソッドのひろぽんのレビュー・感想・評価

鍵泥棒のメソッド(2012年製作の映画)
4.4
銭湯で転倒し頭を強打した伝説の殺し屋コンドウ。そこに居合わせた貧乏役者の桜井は彼のロッカーの鍵を出来心で盗んでしまい自分の鍵と入れ替える。頭を強打して記憶を無くしたコンドウと桜井はお互いに入れ替わり、別の人生を歩み始めた2人の人生の行く末はどうなるかというコメディ。


貧乏役者と伝説の殺し屋が入れ替わってしまうお話。そこに婚活中の雑誌社の編集長の香苗が絡み、この3人をメインに物語が進んでいく。

周囲の人間に借金はするし、支払いも滞納してばかりの桜井。オマケに部屋は汚く、役者の勉強もせず私生活をダラダラとボロアパートで過ごしているという有り様。入れ替わって豪邸に住んでも派手にお金を使い、高い洋服を買うなどやりたい放題でだらしのない愚人だということが分かる。

一方、コンドウは記憶をなくすも、役者の桜井として生きるために演技の本を読んだり、役者として成功できるように小さな事でもコツコツと勉強し、自分がどういう人間なのかをノートにメモするなど真面目で勤勉な努力家。

どんな状況においても自分の人生を生かすも殺すも自分のやり方次第だというメッセージ性が込められている。どんな環境にいようとも、本人次第で良くも悪くも変化する。


この作品を観てて福沢諭吉のよく使われる一節を思い出した。平等主義者だといわれてるけど、実際は学ぶ人と学ばない人には差ができるって言ってる様に、努力しないとどんな良い環境にいたとしても変わらないんだなと感じた。

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福沢諭吉 『学問のすゝめ』
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。(中略)「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。
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香苗の結婚相手の条件が「健康で努力家」というのが意外となるほどなと感心した。


至るところに伏線が散りばめられているし、それを見事に全て綺麗に回収する内田けんじの脚本が凄いなと思った。特筆すべき点は堺雅人と香川照之の演技が上手すぎて半端ないということ。コンドウ役の香川照之が記憶を取り戻すところから一気に引き込まれ劇的に面白さが加速していくし、そこから全く別人の表情になるのは度肝を抜かれた。堺雅人はコンドウになりきって殺し屋の演技をする修羅場が1番の見せ場!

邦画でもこんなに巧みに作れるもんなんだな。大笑いするというよりはジワジワくる面白さがある。最後まで緊張感を持って観れる面白さがある。大どんでん返しとまではいかないどんでん返し。

ワンシーンだけ登場するムロツヨシがおもろい。
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