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鍵泥棒のメソッドのkomoのレビュー・感想・評価

鍵泥棒のメソッド(2012年製作の映画)
4.2
売れない俳優の桜井(堺雅人)は金に困った挙句、銭湯で転倒している山崎(香川照之)という男と自分のロッカーの鍵を入れ替えてしまう。
金をいくらか拝借したのち、入院中の山崎の病室に財布を返しにゆくものの、運悪く山崎が目を覚ます。頭を打って記憶喪失になった山崎は、所持品から自身を桜井という名の人物だと思い込んでいた。
真実を打ち明けられない桜井。そんな折、手元にある山崎の携帯宛に危険な依頼が飛び込む。山崎は『コンドウ』という偽名を持つプロの殺し屋だったのだ。


日本アカデミー賞の脚本賞を獲っただけあり、まったく先の読めない入り組んだストーリーでした。
監督兼脚本を務めた内田けんじ氏の、『石鹸で滑って記憶喪失という、一番やっちゃいけないベタな始まり方なのにこんな賞をもらえるとは』というスピーチが好きです♪

冒頭は殺し屋コンドウこと山崎が依頼を果たして返り血を受けるシーンや、桜井が首を括るも死に損ねるシーンから始まり、コメディらしからぬ装い。
絶望している桜井が財布の中から折れ曲がった銭湯のタダ券を見つけるところや、脱衣所で山崎の分厚い財布にそれとなく目をやっちゃうところのディディールが細かい。
そしていかめしい表情の山崎が浴場に足を踏み入れるも、石鹸で滑って宙を舞うシーンは一気にギャグ超に。気を失った山崎に子供が水鉄砲をプチュプチュ飛ばしてるのがなんだかリアルですごく笑えた(笑)

裏稼業をしていた時と、記憶を失って自らを売れない役者だと思い込んでいる時の香川照之さんの表情のギャップが凄すぎる〜。桜井として演劇を観にいった時の笑顔が屈託なさすぎる。こんな香川照之観たことない!
自分自身がわからず不安に陥る最中、年老いた父のために結婚を急ぐ香苗(広末涼子)と慎ましやかな交際を始め、更には真剣に芝居に励み始めちゃうなんて根は真っ直ぐな人なんだなぁ。

桜井は山崎が裏社会の人間だと気づき始めているのにヤクザの依頼を受けて収拾つかないことになっちゃうし、なにやってんの〜と思いながら、間抜けな堺雅人さんはとても美味しかったです。
終盤はピンチを脱することに一芝居打つことになりますが、それが堺雅人節全開な芝居で最高。

ラストシーンをフルに楽しむためには、『山崎が桜井のアパートの住人たちの部屋を訪れるシーン』と『香苗と姉の会話シーン』を見逃さないことをオススメします!
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