デニロ

恐怖省のデニロのレビュー・感想・評価

恐怖省(1944年製作の映画)
4.0
1944年製作。原作グレアム・グリーン。脚色シートン・I・ミラー。監督 フリッツ・ラング。

椅子に座り、時が過ぎゆくのを待つ男。その時が訪れ、自由の身だ。そこは精神病院。始まりはそんな感じでなんだかよく分からない。精神病院で何してたのさ。ロンドン行の電車を待つ間慈善バザーをブラブラとする。ケーキの重さ当ては如何です?と誘われて戯れに答える。占い小屋に誘われるまま入り込む。占い師に謎かけされケーキの重さ当ての場所に戻り、占い師に言われた通りの重さを告げる。

そんな感じで物語がスタートして、手に入れたケーキからナチスドイツのスパイ組織の陰謀に巻き込まれていく。

後からかんがえてみるとアレは何だったんだろう、というようなエピソードもありますが、テンポよく進んでいくので観客に反証を与える間もなく進行していきます。

謎の盲目男や謎の女霊媒師、そして謎のオーストリアからの亡命兄妹。出たり入ったりで忙しい。何せ86分程度の作品の中に謎と人物をたくさん散りばめていて整理がつかない。謎の女霊媒師が主宰する降霊会に集まる連中が曲者だらけで、そこで起こる殺人事件。この殺人も何のことだったのか最後にはわからなくなる。何のことだかわからぬのは主人公が雇い入れたしょぼい探偵。ちょっと主人公と絡んだけれどいつの間にかいなくなったと思っていたら、死体で見つかったと。死体にする必要があったんだろうか、そんな風にも思うけれど強引に主人公を危機から危機へと導く話なので余計なことを気にしてはいけません。

実の兄を撃てやしないだろうと高を括っていた兄貴が妹に撃たれて愕然とした後に、その妹は主人公とハッピーエンドになるんですが、その主人公が何故に精神病院に入っていたかというと、不治の病に苦しむ妻に毒を盛って楽にしようか否か逡巡している間に、妻がその毒で自死してしまったということで、彼は精神耗弱として精神病院に送られていたのだそうで、大丈夫なのか暢気なこのラスト。

シネマヴェーラ渋谷 文学と映画 にて
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