タチユロ氏

回転のタチユロ氏のレビュー・感想・評価

回転(1961年製作の映画)
3.5
「心霊」という言葉があるが、この映画を見るとその言葉の意味がわかるような気がする。

「幽霊」ではあるけれど、ただの幽霊とは少し違う。もしかするとあの幽霊は、それを見た人(あるいはこの映画を見た観客)の不安定な心理状態が引き起こした幻なのかもしれない。幽霊というものは人間の心理と紙一重のところにいるのかもしれないと思わせる。だからこそ「心霊」なのかも。

ゴシックホラーの金字塔であるヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』をジャック・クレイトンが映画化したこの作品は、Jホラーの作家たちがインスピレーション元としてよく挙げる作品でもある。

おぞましいものが目の前に現れる恐怖というよりは、いるはずのない何かが日常の風景に紛れ込んでいる違和感からくる恐怖。
しかもその恐怖が映写機による投影や、フィルムの重ね合わせといった映画の機構そのものと密接に結びついている。改めて、なんで映画や写真はこうも幽霊と親和性があるのだろうと思わされる。

悲鳴を上げてしまうような怖さはないかもしれないが、ふと部屋の隅にある暗闇に誰かいるかもと不安になる怖さはある。
タチユロ氏

タチユロ氏