みゅうちょび

回転のみゅうちょびのレビュー・感想・評価

回転(1961年製作の映画)
4.3
大好物…

名作と言われるこの映画は、昨今のドンチャンする幽霊屋敷ものでなく、もっと幻想的でじんわりとした怖さです。白黒の映像が美しく、大きな池の葦の茂みに浮かぶ女の影や眼に見えない何かの存在などを映画全体の雰囲気と役者の表情から感じさせるような作風がとても好きです。

街から離れた大富豪の屋敷で両親を亡くした幼い兄妹の教師として住込みで働く仕事を得たギディンスが、愛欲に溺れた末に謎の死を遂げた前任の女教師とその屋敷の庭師だったクイントの亡霊に悩まされてゆきます。

***ネタバレ注意***
子供たちが前任の女教師と庭師クイントの男と女の関係を見ていたかもしれないという憤りが彼女の子供たちを見る目を変えてしまいます。
無邪気であるはずの子供たちの中に死んだ2人の亡霊を見て、なんとか子供たちを救おうする…
といった幽霊話のようですが、
この映画の面白みはもう一つあります。それは、ギディンスがもう若いとはいえない年齢の独身女性であり、彼女が雇主である子供達の伯父さんにあたる男性を強く意識しているということから、新任教師としての責任の重圧さや、彼女に降りかかる様々な問題を1人で解決し雇主に認められたいというプレッシャーに押し潰されて行く様を描いているともとれるのです。

ただの幽霊屋敷物に収まらないサイコスリラーとして、ある意味2度美味しい映画です。

こういう作品がもっと観たいと思う今日この頃。最近の幽霊物は幽霊がかなり頑張らないとならないようで気の毒です…

本作を3度美味しく観るには、この映画の前日譚として作られた「妖精たちの森」という映画を観ると、前任の女教師とクイントの許されない赤裸々な関係とどうやって死んだかが描かれており、幽霊物としてもスリラーとしてもさらに怖さが増します。
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