青二歳

パッテンライ!! 〜南の島の水ものがたり〜の青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

本日5月8日は八田與一の命日で、台湾では民主化以降、この日に彼の功績を称えるため墓前祭が執り行われるようになりました。八田の人柄ゆえなのでしょうが、台湾人の義理堅さが伺えます。
台湾の灌漑に尽くした利水の専門家八田與一の物語。

「パッテンライ!」は「八田が来た!」という意味で、とんでもない灌漑工事を企画する八田が土地を騙し取ろうとする山師に見えたらしい。さながら「鬼が来た!」
しかし八田與一は、台湾総督府を説得し、現地の台湾人の理解を少しずつ得て、類を見ない大規模な灌漑工事に着手していく。

10年に及ぶ灌漑工事では、多くの犠牲者も出してしまい、彼は責任者として心痛め苦しむ姿が描かれます。この犠牲者は日本人台湾人の別なく慰霊碑に名を刻まれたようなのですが、こうした八田の人柄が慕われた所以のようです。

フィクションでしょうが、英哲という台湾の少年が八田與一の志に惚れて心動かされるくだりはいいですね。子供時代にここまで尊敬できる大人に出会えるというのは羨ましいものです。
「技術者を大事にしない国はいづれ滅びる」と総督府と喧嘩してる八田のセリフは(いい言葉で印象的とはいえ)やや唐突でしたが、英哲など後進を育てる八田の姿勢に繋がるものかもしれません。

ほか当時の台湾について気になった点はいくつかありましたが…台湾人と日本人労働者で賃金に差があった点についてはもっと細かい事知りたくなりました。この感じだと八田関連の資料は多そうなので比較的調べるのは楽かも。分かったら追記します。

ちなみに監督は劇場版マクロス等アニメ大作を作ってきた石黒さん。しかし山場らしい山場があるようなないような…泣けるエピソードは散りばめられているけれど、ちょっと抑揚を抑えた仕上がりでしたね…大仰にしない方針だったのかもしれませんが。劇映画としては地味だけど、丁寧に作られている作品でした。

先日八田与一の像の首が盗まれた(?)とのニュースがありましたね…あの像は日本云々以上に台湾人の義理堅さの象徴なのに…心無いことです。あの(対日については)熾烈な国民党時代に、日本人の像をずっと隠していたなんて地元の人のお心映えには感服するばかり。
彼の死を悼む方々は心痛めておられるでしょうが、無事修復され、今年も変わらず墓前祭が執り行われるそうです。
青二歳

青二歳