津軽系こけし

エスターの津軽系こけしのレビュー・感想・評価

エスター(2009年製作の映画)
4.7
狭間の悪魔


【実は初見じゃない】
友達に痛恨のネタバレを食らった作品。私の好きな要素がふんだんに盛り込まれているだけに、この感動を初見で味わえないことが心底腹立たしい。この悔しさと共に、今作を氷下(評価)に沈めよう。

【アメリカの養子文化との関連】
お迎えした養子がやべーやつでしたっていう話。今作のアイデアは、養親が抱くどうしようもない不快感から着想を得てると思う。他人の子供だからこそ大切にしてあげたいという自己呵責と、他人の子供だから擁護し切れないというジレンマ。

是枝監督の「そして父になる」や
河瀬監督の「朝が来る」でも扱われていた題材である。

まさに今作のエスターは養子というものの構造が持つ究極のジレンマにつけ入る悪魔なのである。そしてこの企画の採用には、アメリカの養子文化の浸透が背景になっているのだろう。だからその点、養子文化があまり浸透していない日本人には、今作が内包する真の恐怖が伝わりづらく、単なる「家族を利用する酷いサイコパスの話」としか見られていないような気がしてならない。

しかしながら、その恐怖から逸脱して本作が国内で人気を博しているのは、エスター の圧倒的なビジュアルのおかげだろう。

【エスターのビジュアルと日本文化】
特に日本の若年層には、刃物と血と少女という三要素の絡みがもてはやされやすく、サブカルの流行もたびたびそのニュアンスが顔を出す。つまりニュアンス面ではすこぶる合致しているのだ。
さらに彼女の様相は、昨今の日本の地雷系ビジュアルに奇しくも重なる。そういうものが積み重なったためにこの作品が現在も注目され続けているのだろう。

だから日本人はロリコンだと言われるのだ

【まとめ】
日本のサブカルとの関連だとか、アメリカの文化背景との重なりだとか、いろんな要素が霞んで見えてとても面白い作品。ネタバレを被らなければ楽しめただろうに、おのれ友人…っ!末代まで呪ってやる。
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