せみ多論

エスターのせみ多論のレビュー・感想・評価

エスター(2009年製作の映画)
3.5
以前見たものですが、時間が空いたのでレビュー

ネタバレしないほうが面白い映画だから中身には触れないのですが、終盤エスターがメイクしているシーンで、強く思い出されたのが楳図かずお先生の漫画『あかんぼう少女』でした。

作り手が楳図作品を意識していたのかどうかは調べていないのでわかりませんが、それを感じた瞬間に、エスターに対して恐怖とまた別の悲しいような人間味というか、不思議な感覚を覚えました。

作品では例を出したくないので、あかんぼう少女を例えにさせていただきますが

あかんぼう少女では、たまみという赤ん坊の容貌は赤ん坊₍顔は結構邪悪₎ですが歳は若くはない、称するに体が成長しない女性なんです。彼女は見た目が赤ん坊である代わりに片方の手が鬼の手のようなものになっていて、それで殺人をしたりするのですが。

この彼女が一人誰にも知られないところでおめかしをするのですが、どうしたって可愛くは出来ない、あたしはこの鏡を見てホロリと涙をこぼすたまみに対して、何とも言えない気持ちになるんです。
悪役として出ているんだけど、その悪行のために幼い外見を利用するのだけれども、それはまた別の部分では彼女の悲しい思いを募らせていくものでもある。そう感じた時、一概に悪いものとみれなくなってしまった。彼女がもっと普通の外見であったら、たったそれだけで、どれ程多くの人間が幸せであったのだろうか、無論たまみ本人を含めて。そう思うと非常に気持ちが不安定になったこと。

こういった思いをエスターにも感じました。

終盤でわかるように彼女は愛が欲しかっただけなのだ。やり方は歪んでいるけれども、そう歪んだやり方をせざるを得なかった事情を考えるとやるせない。もちろんエスターの犯した罪は許されることではない。だがそれでもエスターが何か幸せになりたいとか、なれるような未来が示されていたら良かったと思ってしまう。
ただまぁそうするとホラーじゃなくなっちゃいますね。
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