ゆりな

海辺のポーリーヌのゆりなのレビュー・感想・評価

海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)
3.7
なにこれ、めちゃくちゃ切ないし恋愛の真理じゃん。
真理なのに、こんなに科学が発展してジェンダーも認められる世界になってきたのに、40年経っても今も昔も、愛の苦しみは変わらないの?
ちょっと悲しくなっちゃった。

サブカルな私がいかにも好きそうなのに初観賞のロメール。
思った以上に映像が古い〜〜!ゆえに字幕のフォントが昔の可愛いやつだ。久しぶりに見た(笑)
冒頭から画面の中の2人が麗しすぎる。

この作品に影響を受けた映画監督、たくさんいるんだろうなぁ。私は逆輸入なので、だってどこかで見たことがある気がするんだもん!

みんな浮ついた感じで、男女取っ替え引っ替えでちょっと嫌な気持ちになる映画かと思いきや違った。
まずタイトルは「ポーリーヌ」だが、主人公の半分は従兄弟のマリオンが占めるし、マリオンが小悪魔的なポジションかと思いきや、純粋に恋してる。
プレイボーイ(らしい)アンリはどう見てもおじさんで元彼ピエールの方がかっこいいのに報われない。

最初は飾り気がなくて陸上部の少女のようなポーリーヌが段々大人びて来たのはさすが映画だなと思ったし、圧倒的にマリオンは話し方が色っぽくて、ポーリーヌには色気がない。
あとメイクと服装によって結構印象変わる、マリオン役のアリエル・ドンバールが美しい。

最初は元カノのマリオンを口説くピエールも手が速すぎてなんだ?と思ったら終盤の巻き返し……!
そして従兄弟という設定から、若いかと思いきや、段々とマリオン&ピエールがそこそこ歳上なことが分かってくる。
このシーンでは恋愛の心理が語られていて悲しかったし、初恋かもしれないけど自分のことを第一で優先したポーリーヌの強さがよかった。

他の人の感想に「アンリ、てめーだよ!」ってあったんだけど本当にそう。
てめーみたいな大人がいるから子供と純粋な男女が傷つくんだよ、害悪め!と思った。

本作を検索すると「ほろ苦い一夏」って出てくるのだけど、最後の最後までアンリが気持ち悪くてビビる。
そこに成敗できるポーリーヌは子供だけど、誰よりも達観した大人でかっこよかった。だから「ほろ苦い一夏」なんて言葉で片付けないでほしい。
だって主人公であるポーリーヌがそうは思っていなさそうだから、余計なお世話よね。

マリオン、目を覚まして!と思うけれど恋は盲目。
だって自分にだって周りにだってみおぼえがあるもんね。だからこそ、この映画はコメディでくくられているわけで。
みんなが救われたりハッピーエンドが欲しいけれど、そうはいかないのがフランス映画。

他のロメール作品が自分と合うといいな。

ポスターになっている早朝に窓から外を見るシーンな序盤なのだが、なんだか目から離せない、焼きついているんだよなぁ。
この後、散歩して見てしまうところとか、絶妙に主人公になれないやるせなさとか、でも仕方なさや夏の早朝に紛れて「諦め」や「まぁいっか」が潜んでいて、少し物悲しいけれど、私はすきだな。
ゆりな

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