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海辺のポーリーヌのyskのレビュー・感想・評価

海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)
4.5
「正義」も考えもの

ピエールが考える「正義」は日の当たる表舞台ならそれでいい。けれどそんなふうに説明できるような簡単さで、目の前の現実があるわけじゃないんだよな。そんな「正義」は空想だ。

アンリは清々しいほどに「悪人」だ。だがそれがいい。自身の欲望に忠実という意味で信頼できる。
ピエールも清々しいほどに「善人」だ。
ピエールの「正義」は、アンリの欲望にとっては「悪」となる程度の「正義」でしかないし、彼は嘘や建前を悪とみなして退けてしまう。嘘や建前は単なる「裏」であってそれだけでは悪にはならないのにね。「正義」を語るんなら、その場に登場する全員を幸せにする世界観を提示して全員を救ってほしい。一番大事なマリオンの気持ちすら救えてない。

ピエールにもアンリにもマリオンにも振り回されず、純粋に恋をしていたポーリーヌはとても良かった。アンリのように狡猾でなく、ピエールのように独りよがりでもなく、マリオンのように盲目でもない。ポーリーヌの醸す、魅惑しつつ同時に一線を引く人との関わり方こそいい。
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