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パニック・ルームのYYamadaのレビュー・感想・評価

パニック・ルーム(2002年製作の映画)
3.6
【サスペンス映画のススメ】
〈ジャンル定義への当てはめ〉
 ○: 観客の緊張感を煽る
 ○: 超常現象なし

◆作品名:
パニック・ルーム (2002)
◆サスペンスの要素:
・侵入犯からの防衛

〈本作の粗筋〉
・その4階建ての高級タウンハウスには隠された部屋が存在した。コンクリートの厚い壁で覆われ、完全に独立した電話回線と換気装置。そして、家中を映し出すモニターと完璧なまでの防犯システム。その部屋が作られた目的は、たったひとつ、決して誰も侵入させないこと―。
・離婚して娘とふたりだけで新しい家に移り住んだメグ。そこへ、突然3人の残忍な強盗が押し入ってきた。メグは、咄嗟に一人娘を抱えとある部屋に身を隠す。しかし、「パニック・ルーム」と呼ばれるその秘密の隠れ部屋こそ、彼らが目指していた場所だった…。

〈見処〉
①フィンチャーが描く、
 一夜の密室サスペンス
・『パニック・ルーム』は、2002年に製作されたサスペンス映画。サスペンスの名手、
デヴィッド・フィンチャー監督が、屋敷に侵入する強盗たちと緊急避難用の密室「パニック・ルーム」に立てこもった母娘の攻防を描く。
・主演はジョディ・フォスター。その娘役に、のちに『トワイライト』シリーズで人気No.1女優となるクリステン・スチュワート。犯人役には、のちにそれぞれアカデミー主演男優賞・助演男優賞を獲得したフォレスト・ウィテカーとジャレッド・レトが務め、スタッフ、キャストともにビッグネーム揃いの作品となっている。

②難産の作品化
・本作は当時のハリウッド売れっ子No.1脚本家のデヴィッド・コープが、わずか6日間で書き上げたオリジナル・シナリオをコロンビア映画が400万ドルという記録的な高額にて映画化権利を取得し、プロジェクトが始まる。
・コロンビア映画とって、本作は絶対に失敗できないプロジェクト。600万ドルの費用にて4階建てセットを構築し、監督にはデヴィッド・フィンチャー、撮影監督にヨーロッパの巨匠たちの作品を撮り続けてきたダリウス・コンジとトップクリエイターを登用。主演女優は人気と実力を兼ね備えたニコール・キッドマンを配し「失敗しないプロジェクト」が稼働。
・しかしながら、ここからがケチのつけ始め。まずは撮影開始2週間が経過した頃、ニコール・キッドマンが、前出演作『ムーラン・ルージュ』(2001)で痛めた膝を悪化させ、突如の降板。彼女と同じグレードの女優のなかから、『ハンニバル』(2001)の出演を見送ったばかりのジョディ・フォスターに代役の白羽の矢がたてたが、彼女は撮影のスケジュール期間中にカンヌ映画祭の審査委員長を務めることが決定していた。
・最終的にはフィンチャー作品に出演を熱望したフォスターがカンヌを辞退することを決断し撮影が再開されたが、その後、彼女の妊娠が発覚。
・さらに娘役のクリステン・スチュワートは、当時11~12歳の成長期。撮影終盤にはフォスターを見下ろすほどに身長が伸びていた。
・「妊娠」「身長」…わずか一晩のサスペンスドラマの整合性を合わせるために「早撮り」を求められたフィンチャーは、遅々として進展しない撮影の弊害となっていた絵作りに妥協をしない芸術家肌のダリウス・コンジを撮影監督から更迭させたが
結果としてフォスター出産後の追加撮影を余儀なくされ、何とか映画を完成させたが、公開日が大幅に遅れてしまった「難産」の作品となった。

③結び…本作の見処は?
フィンチャー版「ホーム・アローン」。
○: 4階建ての室内空間を縦横無尽なカメラワークを駆使して、サスペンス仕立ての作品とするフィンチャーの演出が冴える。彼の代表作ではないが十分のクオリティ。
○: ジョディ・フォスター扮する母親のメグによる、とっさの判断力は目を見張るものがある。ニコール・キッドマンよりも、フォスターが適役だと思う。
▲: 薄暗いシーンの連続は、睡魔との戦いを助長させるので要注意!
▲:「注射を打たないと死んでしまう子供」「電波が届かない携帯電話」の「サスペンスあるある設定」、さらに「マスク着用の犯人が一番の小者」という「どんでん返さない設定」が残念極まりない。
▲: ラストのジョディ・フォスターの表情アップは何??
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