アキヒロ

ファンタスティック Mr.FOXのアキヒロのレビュー・感想・評価

ファンタスティック Mr.FOX(2009年製作の映画)
4.5
『チャーリーとチョコレート工場』のロアルド・ダール原作の『ファンタスティックMr.Fox』のパペットアニメーション化。
世界観と人形劇とウェスの色合いという組み合わせがよくマッチしている。

元々ダールは人生論的テーマを犯罪小説に組み込んで書くのが上手い作家で、本作に関してもそういう作風が採用されている。
いろいろなテーマが内在しているが、
その一つに「野生へのあこがれ」がある。

FOX氏は元々ニワトリ泥棒で生計を立てていたが、妻の妊娠を期に足を洗い、新聞記者というカタギの仕事につく。
他の動物たちと一緒に人間のような社会共同体を築き生活しているが、FOX氏は「何かが足りてない感じ」がしていた。

そこでフクロネズミとともに「本来の野生動物らしいニワトリ泥棒、生肉泥棒、りんご酒泥棒をするうちに、これこそが自分たち"野生動物"の真のあり方ではないか」と感じ始めるが、人間からの厳しい復讐が待っている。
逆境はありながらも、動物たちは「野生本来の能力を活かすこと」でそれを乗り越えていく。
それを分かりやすくするために「自分たちをニックネームではなく、"生物としての学名"で呼んで鼓舞するシーン」なんかは面白い表現。

この物語が最後なぜ「スーパーマーケットに盗みに入って大団円を迎えている」のか、なぜ「野生の狼に出会ってその美しさに見惚れるシーン」があるのか、というのは、「野生回帰への賛美」をうたっているからだ。
新聞記者ではなく、野生動物なら「人間から食べ物を奪ってみせろ」というわけ。
これは同時に、社会制度や政府に飼い慣らされ、"非野生化してしまった猿"である我々へのメッセージにも感じられる。
深いテーマをコミカルに描いた傑作だと思いました。

ウェス・アンダーソン作品では『グランド・ブタペスト・ホテル』が大好きなんですが、
この頃から正対で真正面から撮影する構図を好んで採用していたんだなとわかる。
むしろ、こういったストップモーションの撮り方を実写で採用した結果、ああなったのかもしれない。
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