ほーりー

女が階段を上る時のほーりーのレビュー・感想・評価

女が階段を上る時(1960年製作の映画)
3.6
凄いよね、高峰秀子って。衣装考証もやっちゃうんだから。

銀座のホステスたち(ちなみにホステスという言葉が定着したのは1962年以降。それまでは女給と呼ばれていました)の悲哀を描いた成瀬作品。ホステスたちの衣装について主演の高峰が兼任している。

そう言えば、あまり海外で水商売を舞台にした映画って聞いたことがない。日本特有の文化なのだろうか。日本でも本作以前では芸者置屋や遊郭が舞台の作品が多いような気がする。

高峰秀子が演じるのは銀座の高級クラブの雇われマダム。元々は喫茶店のレジ打ちだったが今のマネージャー(演:仲代達矢)に拾われてた経緯がある。

ところが最近は店から独立した女の子(淡路恵子)の店が繁盛となり、それに押されて売上も大きく減ってしまう。

お店の常連客は、ダンディーな銀行支店長(演:森雅之)、人当たりの良さそうな町工場の社長(演:加東大介)、関西人気質丸出しの御大尽(演:中村鴈治郎)、そして経営コンサルタント役の小沢栄太郎。

このうちの誰かをパトロンにして何とか経営危機の事態を乗り切りたいところだが、ママさんとしては男に体を売るような真似はできない。

特に相変わらず性格クズな小沢(笑)はママに言い寄ろうとするので、嫌気がさしたママはお店を移って新規巻き直しをはかる。

タイトルの『女が階段を上る時』とはバーの階段を上がる時で、主人公が自分の感情を殺して接客することの苦しさが込められているんだと思う。

本作と『乱れる』『乱れ雲』のヒロインはいずれも亭主と死に別れていて純潔を守ろうとするのが共通している。

本作の場合、小沢、鴈治郎は勿論のこと、真面目そうに見えて意外にも裏の顔を持っている奴もいて、周りが結構クズばっかりなのでママの気丈さが際立っている。

仲代扮するマネージャーも「俺は店の商品には手を出さない」と言いながら女の子とちゃっかり寝たりと侮れない。

■映画 DATA==========================
監督:成瀬巳喜男
脚本:菊島隆三
製作:菊島隆三
音楽:黛敏郎
撮影:玉井正夫
公開:1960年1月15日(日)
ほーりー

ほーりー