あまりギャグで笑わせるタイプではない犬塚弘が主演のコメディだけれど、演技は上手いので厳しい現実に耐えるペーソスと夢の中で理想の恋人・岩下志麻と楽しむ様子を両方自然に演じ分け、普通のコメディアンのようにギャグだけ突出することがなく海外の役者がコメディを演じているような雰囲気になっていて悲哀あるドラマによく合っている。特に女優と絡む姿は様になっていて違和感がないのに驚き。
穂積隆信、江幡高志、田武謙三、武智豊子と脇の演技陣も充実しており物語も意外としっかりしているので見ごたえのある佳作に仕上がっている。あとメガネっ子中村晃子のキュートさも見所、ぶっちゃけメインの岩下より魅力的だったりする。
含みをもたせたラストも粋。
ちなみに後年犬塚は『ウルトラマンマックス』にゲスト出演して満島ひかりとがっつり絡むことになるが、コメディアンとしてではなくジャック・レモンやロビン・ウィリアムズのように軽妙さと女優の演技をしなやかに受け止める練達ぶりで二人のやり取りにナチュラルな面白みを醸し出しドラマのランクを高めていたけれどスタッフはこの映画を見て彼の起用を決意したのではと勘ぐってしまう。