安堵霊タラコフスキー

母のおもかげの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

母のおもかげ(1959年製作の映画)
4.8
神保町の特集で何故か他より人が入っていた清水宏の遺作、何か既視感があるなと思ったら次郎物語の後半を重点的に描いたような作品になっていた。

死んだ母親の手前どんなに優しくても継母のことを新しい母親と受け入れるのが難しいことくらいわかれよ!と劇中何度も思わずにいられなかったけれど、それ故に良くも悪くも一番感情移入ができる作品の一つだった。

成瀬とかのようにドラマ的な演出や移動撮影に磨きをかけまくった撮り方等、洗練され過ぎてて逆に清水宏っぽくないところもあり(特に最初のシーンの質感は何故か同時代の北欧の作品を思い起こしてしまった)、見事と思いつつも自然な趣が減じてしまったから洗練し過ぎるのも困りものといった感じだった。

それでも成瀬作品等の普通のドラマ映画と違って奥行きのある場面が多く、そのおかげでセット撮影でもしっかり一個の世界が作品内で感じられるようになっていた点は流石で、ここにおいては最後の最後まで清水流が貫かれていたよう思える。