ひろぽん

容疑者Xの献身のひろぽんのレビュー・感想・評価

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)
5.0
ドラマ『ガリレオ』劇場版1作目

惨殺死体が発見され、新人女性刑事・内海は先輩と事件の捜査に乗り出す。捜査を進めていくうちに、被害者の元妻の隣人である石神が、物理学者・湯川の大学時代の友人であることが判明する。内海から事件の相談を受けた湯川は、石神が事件の裏にいるのではないかと推理する。天才的な犯人による事件の真相を解明できるのかという物語。


天才物理学者VS天才数学者

最初から犯人が誰か明かされているものの、トリックは分からず終盤になって全てが明らかになる構成が面白く、画面に釘付けになる。

石神が目を覚まし、勤務先までの道中でホームレスたちの横を通り、花岡靖子の弁当屋でおまかせ弁当を買い、お店を出た所で花岡靖子の元夫とぶつかり、殺害後の花岡靖子の家に上がり込む。この冒頭の短時間にこの物語の全てが凝縮されている演出が巧みで素晴らしい。

何気ない日常を描いているように見えて、実はしっかりと登場人物たちの関係性や伏線が張り巡らされており、無駄な演出が一切無い。


幾何の問題に見せかけて、実は関数の問題であるという石神の数学者らしいトリックの仕掛けはお見事だった。

生きる希望をくれた女性に自分の全てを捧げ、自己犠牲の精神で与える無償の愛が美しく尊い。タイトルの『容疑者Xの献身』という言葉の意味が分かると深いなと思う。

ラストの石神と花岡の2人の泣き叫ぶシーンの圧巻さが素晴らしく感動してしまう。寡黙で一切同様もしない男が感情を露わにして泣き叫ぶというのかは心に響くものがある。

湯川が唯一天才と認めた友人の石神の真意に気づいてしまった時の寂しそうな表情や、石神との会話を終えた取調室で扉越しに聞こえてくる石神の泣き声と対比するように静かに流す涙の切なさが忘れられない。

終盤に明かされる石神と花岡親子との関係性が微笑ましく、希望を与えるものだった。

『ガリレオ』シリーズでのコミカルさは消え、シリアスな内容に絞ってる点が本当に良かった。石神と花岡という登場人物にスポットを当て、湯川の出番も適度にありバランスが上手く保たれている。あえて2人を中心に据えたことで、タイトルにガリレオを入れなかったというのも好感度が高い。

主題歌のKOH+の『最愛』の歌詞とストーリーがマッチしており、鑑賞後に切なさの余韻が残る。エンドロールのスノードームがそれをさらに引き立てる。

何回も鑑賞している作品だけど、堤真一と松雪泰子の圧倒的な演技力と存在感があってこその作品だと思う。

愛を知らないまま終える人生と、罪を背負いながらも愛を知る人生。どちらが良いのか分からないが、後者の方が幸せなのかもしれない。

このシリーズの中では1番好きな作品であり原点にして頂点。今作を超える作品は今後現れないと思う。
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