Kumonohate

つる-鶴-のKumonohateのレビュー・感想・評価

つる-鶴-(1988年製作の映画)
3.5
公開当時に劇場で見たときには、市川崑監督の企みに乗っかることが出来ず(正確には、企みなどわからず)、非道い出来だと思った。だが、この歳になって改めて見てみると、なかなか良い作品じゃないの、と思う。

ストーリー丸わかりの昔話を忠実に映像化し、特に新しいエピソードを付け加えることも無く、お話がスカスカなぶん個々のシーンをじっくりと描き、敢えて舞台調に演出する。しかも、私の様に既に一度観ていたりすると、ど派手な驚かしがあるワケじゃないこともわかっている。そうすると、どうなるか。鑑賞者は、否が応でも行間を読まざるをえなくなる。その結果、人間の欲や見栄や不純や傲慢や軽率が、それぞれは小さいけれどもだんだんと見えてくる。昔話がそもそも内包している寓話性が、じわじわと滲み出てくる。それどころか、勝手な寓話の深読みまで始めてしまう。その結果、雪景色の映像は奇麗だったりするワケだから、何だか感動してしまう。

この歳になっから、という要因もあるとは思うが、勝手な深読みも含め、市川監督の企みに素直に乗れたことが、妙に嬉しくなってしまうのである。
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