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奥様ご用心の一人旅のレビュー・感想・評価

奥様ご用心(1957年製作の映画)
4.0
ジュリアン・デュヴィヴィエ監督作。

パリへやってきた青年オクターヴ・ムレと彼を取り巻く人妻たちの恋模様を描いたコメディ。
ジェラール・フィリップの腹立たしいほどの美男子っぷりに唖然とする。シュッとした甘いマスク(顔が小さい!)、スーツの似合うスラリと長い脚。甘い口説き文句で同じアパートに住む人妻たちや職場の女社長の心を奪い取っていく。一見するとただのいけ好かない男で、妻を寝取られた夫にとってはたまったもんじゃない(訴訟レベル)。だが、ムレがモノにした女たちは夫との夫婦生活に上手くいっていないのだ。財産に目が眩んだ母親の策略によって、好きでもない男と強制的に結婚させられた女や、夫にほっとかれている可哀想な女、夫を失った孤独な女など、現状の生活に満足していない女たちが次々とムレの魅力に憑りつかれていくのだ。
ムレは女心を弄んでいるだけのように見えて、実は不幸な女たちにひと時の幸せを提供している。ある意味、ムレだけが自分の素直な心に忠実な存在。とっくの昔に夫に対する愛が消えているに関わらず、惰性的に夫婦生活を送り続ける女たち。そうした日々の生活に束縛された女たちの錆び付いた心が、ムレの純粋な愛と欲望によって解放されていくのだ。
己の欲望に付き従う男心(下心)と、その被害者となり、同時に受益者にもなってしまうしたたかな女心を映し出している。結局のところ、男と女、それぞれがお互いを必要としているのだ。
そして、本作を彩る美人妻たちも魅力的だ。一軒のアパートにどんだけいるんだ!って思うほど美人だらけのハーレム状態。特に『男と女』のアヌーク・エーメの美貌はずば抜けている。ケイト・ウィンスレットを彷彿させるキリリと濃く太い眉と目鼻立ちのしっかりした顔立ちは彫刻のように完璧な美しさだ。
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