TaiRa

貸間ありのTaiRaのレビュー・感想・評価

貸間あり(1959年製作の映画)
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男の逃げっぷりが川島雄三。「サヨナラだけが人生だ」のやつ。

四ヵ国語話者のお人好し作家とその他大勢の奇人変人が住むアパート屋敷の狂騒喜劇。フランキー堺がインテリの作家で淡島千景が活発な陶芸家。「貸間あり」の札見て彼女が屋敷に住み始める。この二人のラブコメ要素も中心にはあるんだが、周りの住人たちが総じて変人ばかりで常時カオス。比較的まともに見える桂小金治の「貸間あり」の札作りが生き甲斐って設定も凄い。誰かを招き入れたいわけじゃなくて、札が出ている状態が完璧らしい。乙羽信子はパパ活女子で、地元帰って結婚するからとフランキー堺にパパ切り手伝ってもらうくだりは楽しい。彼女に貢いでた爺さんが別れの品にと口から入れ歯出して手渡すと二人して涙、みたいなのは阿呆らしくて好き。彼女が帰省のアリバイ作りで淡島千景のお付き役の練習するとこもゆるくて良い。何か全体的に00年代深夜アニメ的な笑いが感じられる。フランキー堺がその気はないのに女にモテモテだし。淡島千景との「今日はツンツン」のやり取りがシンプルに胸キュン場面として完成度高い。基本的に主人公二人がかわいい。終盤はカオスが怒涛で、サイコパス浪人生の小沢昭一が仕組んだ替え玉受験のくだりもヤバい。小沢昭一が無茶苦茶なこと言いながら棄権したフランキー堺をぶん投げ続けるとか。絶倫女房に精気吸い取られて衰弱していく旦那とか、謎の栄養剤作りとか何なんだっていう気もする。嵐が去った後にスンと寂しくなる結末に、良いもん観た感がある。
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