ねこねここねこ

アンブレイカブルのねこねここねこのネタバレレビュー・内容・結末

アンブレイカブル(2000年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

アンブレイカブル、スプリット、ミスターガラスの3部作の中ではこれが1番好きかな。

シックスセンスといい、少し陰のある哀しみを抱えた男をブルース・ウィリスが好演している。アクションだけでなくきちんと演技できるのがいい。
関係ないけどキワモノの役をやると光るジョニー・デップはごく普通の男の役になるとまるで光彩を放つことができなくなるのとは対照的。

何となく妻とうまくいっていないデヴィッド(ブルース・ウィリス)。ある日乗車した列車が脱線事故を起こし奇跡的にただ1人無傷で生き残った彼は、以前から自分の身体に違和感を感じていた。それを確信に変えていく存在のイライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)
イライジャはデヴィッドと対照的に些細なことでも骨折し、ミスターガラスと揶揄されていた。外出もままならない彼を励まし外の世界にも出そうとする母親は、ある日彼にアメコミを与える。アメコミにのめり込んだイライジャは、自分とは対極の強靭な肉体を持つ、アメコミのヒーローのような存在が居るはずだと信じていて、それを息子のジョセフと一緒に尋ねてきたデヴィッドに伝える。
相手にしないデヴィッドだが、怪我をしたことがなく、驚異的な強さの肉体を持っていること、危険人物に触れるとその人の罪が映像化して自分の脳に映し出されることなど思い当たることばかり。

その後妻と向き合おうとデートし、関係を修復させてゆく。一方息子は父親が特別な存在であると確信し、それを確認すべく銃をデヴィッドに向け、撃っても死なないはずだと言い出す。なんて物騒な子供なのかとビックリ。ぶっ飛びすぎだけど、この子が19年後のミスターガラスではデヴィッドの相棒的な存在となっている。

一度は息子に自分は特別じゃないと言い聞かせるデヴィッドだが、イライジャに言われて自分の能力を役立てるべくマントを被り夜の街に出たデヴィッド。彼の唯一の弱点は水。子供時代に虐められプールで溺れさせられたトラウマからだ。街中で人々に触れ、様々な映像を感知しつつ、その中で少女達を監禁している男を追い詰め、プールに投げ込まれるという危機を乗り越えて少女達を救う。

一躍街のヒーローになったデヴィッド。新聞記事を息子に示す。目を輝かせるジョセフ。

イライジャに感謝を伝えようと画廊を訪ねるデヴィッド。その日の画廊は特別展なのか盛況で、イライジャの母は息子を誇りだと嬉しげに語る。
奥の部屋でデヴィッドを迎えたイライジャは「今こそ握手すべき時だ」と手を差し出す。その手を握ったデヴィッドが見た映像は、イライジャこそが脱線事故を企てた犯人であり、それ以外にも数々の大規模で悲惨な事故の犯人であることを知る。
驚愕するデヴィッドに、ヒーローを探すために当然のことをし、自説が正しく証明されたのだと不敵に笑う。
その後デヴィッドによって警察に通報されたイライジャは重度精神病院に入る。

なんともショッキングなラストでスッキリ感はないし、観る人によって好みがはっきり分かれる映画だと思うが、個人的には面白かった。

ヒーローとヴィラン(悪役)という普遍のテーマをこの角度から描いているというのが個人的には斬新だった。

アメコミの世界観を現実に当てはめようというとんでもない男がいて、その男の頭脳が人並み外れて明晰な場合、とんでもない計画が立てられるかもしれない。モラルも何もなく、ただ自分の存在意義や自説を確かめることを優先させた結果としてイライジャは大量殺人鬼である。デヴィッドにとっては1番排除しなくてはならない存在だし、母親の言う通り、力でねじ伏せようとする悪よりずっとタチが悪い、真のヴィラン。
スッキリしたエンディングとは程遠いけどなかなか面白かった。

ナイト・シャマラン監督がヤクの売人で出演しており、ミスターガラスでもその後更生した同じ人として出演しているのも面白い。

冒頭の女性が隣に座るとこっそり指環を外して口説こうとするシーンは個人的には要らないと思う。妻との関係に悩んでいることを描きたかったのかもしれないが、デヴィッドがただのスケベなおっさんにしか見えないのが残念💧