フランコ

晩菊のフランコのレビュー・感想・評価

晩菊(1954年製作の映画)
4.3
成瀬デビューしました。好き。確かに家庭が主な舞台であること、人物の正面っぽいショット、室内の構図、人物が出入りする様子、などは時折小津っぽいけど、小津が私的・崇高で確固たる世界観を描くことに徹していることに対し、成瀬はだいぶ肩の力が抜けていて気楽に観れる。とはいえ日常的なひもじさの描写には妥協がない。編集や人物・視線の動きなど、映像の流れもかなり滑らか。本作は心の声多め。

元芸者で、今は家庭を持たずゆとりを持ちながら金の貸し借りや不動産を転がしつつ、聴覚障がいを持つ女中(鏑木ハルナ)と暮らすおきん(杉村春子)の気高さ!ストーカー気質の昔の男・関(見明凡太郎)や結局は金の無心が目的の田部(上原謙めっちゃイケメン)といっただらしない男性陣との対比、加東大介の即席手話にぽかんとする女中、芸者仲間の娘・有馬稲子の美人さと、見どころ盛りだくさん。ちんどん屋が近づいてくる。

2017/7/29 神保町シアター
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