「目は見えないけど、馬鹿じゃないのよ」。このレイのお母さんの台詞が本作で一番印象に残ってる。
黒人差別が当然視されていた50年代のアメリカで更に盲目というハンディを背負ったレイの人生はまさに「波乱」というほかない。
ギャラを1ドル札で貰うことから「ミスター1ドル」と揶揄され、音楽に没入する過程で麻薬と女性関係のしがらみに溺れていく。安息の生活を自分から捨て去る無軌道な生き方は壮絶で、彼がそうした暮らしの中にしか生き甲斐を見い出せなかったことに少し寂しくなる。
スタジオで即興で「メス・アラウンド」を作曲するシーンと、ブチ切れた愛人を更に煽りながら「旅立てジャック」を作曲するシーンが良かった。特に後者におけるジェイミー・フォックスの笑顔はもはや狂気で観てる方がぞっとした。
製作時はレイ・チャールズ本人がまだ存命だったこともあり本作エンディングの着地はイマイチだったけれども、見応えある作品。