クシーくん

ケロッグ博士のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

ケロッグ博士(1994年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

注:本稿は生理的に不快な単語を幾度となく使用しているので、気分を害される向きは閲覧を推奨しません。あしからず。

以前テレビで昭和の変わった健康法を特集した番組をやっていて、その中に西式健康法という物が紹介されていた。体を固定して変なマッサージ器具みたいなのに掛けられてるシュールな姿を見てその胡散臭さに笑ったが、今にして思えばああした変な健康ブームはいきなり日本で始まった訳ではなく、オリジンがあったのだと本作を観て思い至った。コーンフレークで有名なケロッグ博士は、実はトンデモ健康ブームのインフルエンサーであり、先駆者だったのだ。
しかし、ケロッグ博士の安易なサクセスストーリーでもなければ、医者としてサナトリウムを経営している博士が患者を治していく感動のヒューマンドラマでもないのが本作の凄い所だ。どこまでも品性下劣な風刺コメディである。

健康状態が悪化しているウィルとエレノアのライトボディ夫妻は、治療の為に妻エレノアの崇拝するケロッグ博士が監督する療養所へ入所する。そこではケロッグ博士が考案した奇妙奇天烈な健康促進法が日夜行われており、拷問寸前の治療法を受け続けたために療養所に懐疑的な目線を向けるウィルに対して、エレノアは博士の治療にのめり込んでいき…

ケロッグ博士が経営するバトルクリーク療養所はカルト教団そのもので、
健康の為に死ぬ人間が続出。金持ちが健康志向の為に高い金を払って粗衣粗食に甘んじる贅沢を思いっきり嘲笑う風刺性を備えたコメディではあるのだが、下品の部分が強すぎてその辺りが稀薄になっていたのがやや残念な所。ケロッグ親子もライトボディ夫妻も普遍的な愛情へ落ち着く所は少々とってつけたようだが、まずまずの無難さ。

より現代的な視座を本作に照らすなら、夫婦の性生活として、夫の快楽は幾度となく許される(勿論、妻とは異なりそれ相応の罰も受けているのだが)のに対し、妻は否定され続けている。最後に夫の寛容と互いの喜びが合致するが、この結びは90年代の映画なら許容されるが、現代なら否定される筋運びだろう、と思う。まあ90’sにこんなこと言っても仕方ないんだけど。

ギャグは猥褻&排泄なド下ネタで、パイソンのミーニングオブライフやベニー・ヒル・ショーみたいなとことんお下劣指向。並んだお尻が変な機械でブルブル震えるくらいならまだいいが、流石に下品なネタがこうも続くと食傷気味になる。博士浣腸とマスターベーション言い過ぎ。吐瀉物の天丼ネタ何回やるねん。子宮マッサージのシークエンスは発想とカットバックの繋ぎが最低過ぎて逆に笑った。ある訳ねえだろそんなエロ漫画みたいなマッサージ!

セットや衣装は凄く細かくて、かなり良く出来ている。まあ見事なセットやきらびやかなお洋服も、全てパンツ一丁や全裸になったりウンコやゲロまみれになる前振りにしか見えないのだが。20世紀初頭を舞台にした映画でこんなに下着姿の男女が出てくるのは本作ぐらいじゃないだろうか。

当時「日の名残り」や「ハワーズ・エンド」に出演して評判も高かったアンソニー・ホプキンス、世間からこれで随分酷評を浴びたようだ。まあそりゃそうだろうなあ。文芸路線からいきなりウンコ勃起ゲロおっぱいのオンパレードに落ちちゃね。でも、これに出演OKしたホプキンスの気持ちもちょっと分かる気はするんだよなあ。演じててめちゃくちゃ楽しかったと思う。ただラストシーンの悪趣味感凄いな。
ブリジッド・フォンダ本当に美しい。お祖父ちゃんにそっくりになった叔母のジェーンと比べると、どことなくお父さんに似てる気もする。お嬢様なのにかなり体を張った役なのも色々凄い。時代柄かな。
マシュー・ブロデリックの髭面が可愛い感じ。本作はほとんど彼とジョン・キューザックが色々酷い目に合う拷問映画と言っていいだろう。ジョン・キューザックのパートは正直必要だったか疑問。話動かしやすかったんだろうけど。

実話を元にしているとの触れ込みだが、おそらく6割近くは創作だろう。
少なくとも本筋に関してはほぼ創作ではないか?
ちなみにバトルクリーク療養所が一度火災にあって丸焼けになった事自体は史実らしい。
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