フカヒレ

アマデウス ディレクターズ・カットのフカヒレのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ミロスフォアマン監督作品。

音楽史には全く詳しくないですが、初見でとても魅せられた作品です。天才作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトと、アントニオ・サリエリそれぞれの苦悩や葛藤を描いた作品。

神に忠実な信仰心を持ち、宮廷楽長まで上り詰めたサリエリが、軽薄で下品なモーツァルトの才能に気づき、どんどん沈んでいく、多くのシーンが魅力的。なぜ神はモーツァルトの才能に気がつくだけの才能しかくれなかったのか。特に、モーツァルトの嫁に対して、体を売れば陛下に取り入る、選ぶのは君だというシーンでは、直前の神に最後の祈りを捧げるシーンからも、神が自分をどうするかを試していたのだと見てとれます。人妻は来ず、自分に神の宿った作曲をさせてもらえるのか、人妻がやってきて、淫らに自分を誘ってくる(試練を与える)のか。結果、彼女はサリエリの部屋に来て服を脱ぎ出し、そこでサリエリは、これまで貞操を守り信仰してきた神は、慈悲もくれずただ試練を与えるのみ。悲劇を与えるのみとしサリエリの中で確かなものが壊れた瞬間だったと思います。だらしないモーツァルトの様子を見てもサリエリに同情してしまいます。

一方で、モーツァルトもまた自らの才能や音楽を他人に認められず、ずっと貧困の中にあり悩める日々を送っていました。作曲をしてもその才能に気がつけるのはサリエリだけであり、自分の振る舞いもあり門下生もつかず最後は酒や薬、借金に追われて死んでしまい、とても幸せな人生を送れたとは思えません。

そんな二人の天才性や苦悩、音楽を十二分に表現した良き映画でした。
フカヒレ

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