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オレンジロード急行のニシのレビュー・感想・評価

オレンジロード急行(1978年製作の映画)
4.8
「夏子」では苦手であった、読点で区切る台詞の言わせ方がこの「オレンジロードエクスプレス」では激ハマりしていた。とりわけ、カリフォルニアに勤めが決まった男が郵便受けから部屋へと走り内儀さんにそれを告げる、その喜びと期待による台詞の音感的畳み掛けが素晴らしく良かった。また、原田芳雄のドスの効いた低い声とそれに対をなす諦念を帯びたような高い声の使い分けがヒヤヒヤする物語を絶対的なコメディにしていて感嘆した。

自分達の車が老人2人に盗まれたシーンで普通はサブペンス調になりそうなものだが、片方が興奮してしまい片方がバレるのを防ぐためその口を塞ごうとするという喜劇的で大胆不敵な演出、また検問を抜けるシーンでオレンジロードエクスプレスがそこを無事に通ることができるかできないかを緊張感を持続させながら映し、その次のシーンで無事通過した普通車を中心に画面を据える演出が素晴らしかった。

藤田敏八の車内は、どうしようもない人間たちが最終的に辿り着いてしまう監獄のような印象を持つが、大森一樹のそれは、人生の長い旅路の開放を目指すための移動手段のような印象を持つ。物語の最後に中島ゆたかが言う「みかんの木の進む方向へ行ってみよう」という楽観主義、そうなろうとする成り行き主義な美しい台詞に心洗われた
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