イペー

ツォツィのイペーのレビュー・感想・評価

ツォツィ(2005年製作の映画)
3.7
一人の赤ん坊が、スラムのチンピラ少年の魂を深い穴の底から救い出す物語。

仲間からはツォツィ(=不良)と呼ばれ、本名を名乗らない少年。彼が主人公。おそらく十代、革ジャンで決め、舐められまいと周りを威嚇して歩く。荒みきったスラムの中で、彼らの生き抜く術は強盗。時には殺人を犯す事もある。
仲間との諍いからヤケを起こし、高級住宅地に迷い込んだツォツィ。豪邸に帰ってきた女性に目を付け、彼女を拳銃で撃ち、車を奪って逃走。ところが思いもかけず、車の後部座席には赤ん坊が乗っていて…。

まずツォツィ役の少年の演技が素晴らしい。細やかな表情の変化で、ツォツィの心変わりに強く説得力を与えています。
始めと終わりで別人のよう!

そして、何より彼の心情にリアリティを加えているのは、南アフリカの都市が抱える現状です。バラックが立ち並ぶスラムと、高層ビルが立ち並ぶ先進的な街並み。二つが混在しています。
ツォツィはビル街を見上げる原っぱで、土管を寝ぐらに育っている。
ツォツィの様な少年たちは現実にいる訳で、その事実を無視してこの作品は語れません。

妙に意識高い人の様になってしまいましたが、映画観てばっかりの自分にしてみれば、こういう作品でもないと考える機会が持てないもので…。そういった意味でも良い映画でした!
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