円柱野郎

ツォツィの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

ツォツィ(2005年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

強盗や殺人もするような日常に暮らす主人公が、次第に人間性を取り戻していく人間の性善説がテーマ。強盗をした相手の赤ん坊を車内で見つけた時、主人公は放置することもできただろうが、彼はそうはしなかった。この時点では善意というよりも、おそらく赤ん坊を自分と重ね合わせてしまったのだろうけど、そこから次第に他者を想うことに気が付き始める過程が良い。
ただ、演出的には丁寧に心情を追うというよりも、状況をザックリと追っているようにも見えるので、多少大味かも。終盤は序盤の荒み方がウソのように人が変わってしまうので、少し急いだかなあとも思うけれど、それでもラストの赤ん坊を返すやり取りのくだりは嫌いじゃない。むしろ残された小さい善をこれから救えるのではないかという希望の映画になっていて良いと思う。
しかしこの映画の意義としては、南アのスラムという世界を切り取ったこととだろうか。外から見れば近寄りがたい犯罪のはびこる場所とも勝手に思ってしまうけれど、そこでそう生活を余儀なくされ育った子供たちが主人公たちであるし、それはアパルトヘイトが終わっても世代交代をして次の子供らが土管に住んでいる。そういう世界があると訴えているよね。だからこそ、そこを悲劇でなく希望を残した結末にしたのは、それを何とか変えていきたいという作り手の想いのようにも思えるのです。
円柱野郎

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