あなぐらむ

若い貴族たち 13階段のマキのあなぐらむのレビュー・感想・評価

若い貴族たち 13階段のマキ(1975年製作の映画)
3.9
梶原一騎原作を、徹底的に劇画的な想像力で貫こうとする内藤誠監督作品。
映画が劇画か劇画が映画か。珍しい不良娘役でも清廉さは奪えない、闘う妹・志穂美悦子の13と必ず書かれた衣装の徹底ぶり、
戯画化された世界で悦ちゃんの身体性のみが生々しく際立つ。
もう一人のヒロイン・大原美佐は、山口和彦「怪猫トルコ風呂」に続いて珍妙な作品だけを残した事になる。どこか飛鳥裕子を思わせるその存在。

千葉ちゃんが悦ちゃんのお兄さん役で毎度の華麗な回し蹴りを決め、悪役は楽しげな名和宏と室田日出男(看守長)。まんま劇画だ。
それにしても悦ちゃんの身体能力は凄い。倒される→ハンドスプリングから起き上がっての回し蹴り→投げ、までをワンカットで収めるカメラワークはそれだけで「映画」である。
少年院で悦ちゃんと対する柴田鋭子もカッコいい。若き大葉健二さんの姿も。芹明香は髪に仕込みがある刺客・その名も「櫛巻お京」役。日活で女囚を演じた「実録おんな鑑別所 性地獄」と、シネマヴェーラ渋谷では二本立てで見る事が出来た。ありがたい。

見て思ったんだが、志穂美悦ちゃんって当時としては破格のスタイルの良さにして、体のキレの良さを持ってるんだよね。
本番の勘みたいなものもあると思うんだけど、長回しのアクションでも全然問題ない。集中力が切れない。あれは凄い。歌だけは、残念だけど。
そういう女優がまた、育って欲しいのだ。