だい

渚にてのだいのネタバレレビュー・内容・結末

渚にて(1959年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

世界規模の核戦争によって人類はほぼ滅亡し、
最後に残ったオーストラリアも、
間もなく到達する放射能によって全滅がほぼ予見されている状態。

いわゆる終末映画だけど、
現代だとありがちな、
「終末を回避するために懸命な努力を続ける」ことなく、
それぞれが最期の時間をどう過ごすかという覚悟。
それを淡々と描き続ける感傷的な作りが良い。


広場での演奏に集まる人たちはどんどん減っていき、
愛する人と共に最期を迎えることを決めた者。
故郷で死ぬことを決めた者。
最期になってようやく愛を伝える者。

覚悟のあり方は人それぞれなのだ。


この映画の隠れた主役は科学者ジュリアン。
「人間が自らを滅ぼすほど愚かだとは」
「私もそれに手を貸した立場だ」
と言う彼は、
自らがチューンナップしたフェラーリで、
人生初のカーレースに臨み、勝つ。

劇中では一切語られないものの、
科学者は兵器開発よりも、
このようなことに力を注ぐべきという主張が暗に盛り込まれたエピソードで、
この作品のテーマはここに詰まっていると思う。


全面核戦争がいつ起こってもおかしくない冷戦ド真ん中の時代の映画だから、
当時の人たちはすごく響いたと思うんだけど、
ロシアが核兵器の使用を示唆した今だからこそ、
もう一度たくさんの人が観るべき映画な気がしてる。
だい

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