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ハピネスのodyssのレビュー・感想・評価

ハピネス(2007年製作の映画)
3.8
【映画館で見たい佳品】

ひところの韓流ブームが沈静化したせいか、私の住んでいる田舎でも韓国映画があまりかかなくなりました。でもあんまりブームに左右されるのも考え物。韓流というだけの凡庸な映画が来るのは困りますが、逆にこの『ハピネス』のような悪くない作品まで来ないとなると、映画館や配給の見識を疑いたくなります。

病気を抱えた若い男女の恋愛もので、別に目新しい設定があるわけでもないのですが、病気の療養という条件下で田舎ぐらしをしながら愛をはぐくむ二人の姿が清冽に描かれています。淡々とした物語進行ながら目が離せなくなる。ここらへんはホ・ジノ監督の力量をほめるべきでしょう。

特に注目したいのがヒロインのイム・スジョンです。肺を半分以上切除している女性の役を見事に演じています。映画や物語に登場する女性の類型にも色々あって、有名なのは色香で男を滅ぼすファム・ファタール(宿命の女)ですが、逆に、もろくて弱々しくて男に「守ってやりたい」という気持ちを起こさせるファム・フラジール(はかない女)というのもいるわけで、ここでのイム・スジョンはまさに典型的なファム・フラジールです。清潔感のある美貌とスレンダーな体つきがとても魅力的。

この映画に問題があるとすれば、別れるきっかけが都会の誘惑であるのに、そこの描写が弱いことでしょう。健康を取り戻した男が都会に惹かれるいきさつはもう少し丁寧に描くべきだったと思います。
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