櫻イミト

ジェーン・エアの櫻イミトのレビュー・感想・評価

ジェーン・エア(1944年製作の映画)
4.5
ゴシック・ロマンスを象徴する名作小説「ジェーン・エア」(1847:シャーロット・ブロンテ)の初映画化。監督は「メリー・ポピンズ」(1964)のロバート・スティーヴンソン。主演はオーソン・ウェルズと、「レベッカ」(1940)「断崖」(1941)のジョーン・フォンテイン。音楽バーナード・ハーマン。撮影ジョージ・バーンズ。

孤児ジェーン・エア(ジョーン・フォンテイン)は10歳でキリスト教寄宿舎に送られ、問題児扱いされながらも我が道を歩んだ。成人し家庭教師として住み込んだ城の主ロチェスター(オーソン・ウェルズ)は高慢な男だったが不思議と気が合った。彼は何かを秘めていた。。。

個人的にとても好みの大傑作。“ゴシック”とは何かを知るには本作を観れば良い。古城、闇、ロマン、秘密、残酷と、ゴシックの全要素が見事な映像と演出で表現されている。子役を含め適役キャストが揃い、中でもオーソン・ウェルズは本作の核として映画を引き締めていた。内なる孤独を抱えた者同士が通じ合う様が静かな感動を呼ぶ。

原作は当時の社会通念に反した新しい女性像を描いたことで反響を呼んだ。原作者シャーロット・ブロンテの妹、エミリー・ブロンテの「嵐が丘」(1847)もゴシック要素があり比較すると興味深い。本作を現代視点で見た場合、女性像よりもゴシック美学を体現した映画として再評価できると思われる。

※参考 19世紀前半の英文学女流作家
「高慢と偏見」(1813)のジェーン・オースティン
「フランケンシュタイン」(1818)のメアリー・シェリー

※ジェーンの子供時代を演じたペギー・アン・ガーナーは「ブルックリン横丁」(1945)でアカデミー賞子役賞を受賞。ロチェスターの娘アデルを演じたマーガレット・オブライエンは「若草の頃」(1944)で同じくアカデミー賞子役賞を受賞。またジェーンの親友ヘレンを演じたのは子役時代のエリザベス・テイラー。
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