継

ラテン・アメリカ/光と影の詩の継のレビュー・感想・評価

5.0
南米大陸最南端の島、雪の降り積もるフエゴ島。
高校生のマルティンは父親の消息を追って、南米大陸を北上~横断する5万㎞の旅に出る。

見聞きした出来事や学んだ歴史を日記へ綴り、若き日のチェ・ゲバラの如く南米諸国を放浪するマルティン。
気候、宗教、文化が異なり、多くの言語が飛び交う、肌の色も顔立ちも違う人々との出会いの中で、
苛酷な状況を強いられているにも関わらず決して笑顔を絶やさない彼等(当然先住民も含みます)の姿を通じて、
マルティンは南米大陸を蝕(むしば)む環境破壊の現場や政治的抑圧の実態を目の当たりにしていきます。

コロンブスに発見されてしまった、500年を経過した “新大陸”。
本作は、ソラナスの母国アルゼンチンの政権・支配者階級への告発を皮切りに、
“発見以来” の虐殺、略奪の歴史と、にも関わらず欧米に追従せざるを得ないラテンアメリカ諸国が抱える問題点を、メタファーを用いて皮肉たっぷりに笑い飛ばし、その高いツケを払わされる市井(しせい)の人々を温かな眼差しで描いたロードムービーです。

マルティンのおおよその足取りは、
強風のパタゴニア、水没した町ヴィラ・エペクエン(↓コメント欄参照)、砂漠化したボリビアの密林、ペルーのアルティプラノ山岳地帯で暮らすマッチ売りの先住民少女、クスコのマチュ・ピチュ、アマゾン奥地のセラ・ペラダ金山とガリンペイロ達、カリブ海を渡り中米メキシコのモンテ・アルバン遺跡へ...(抜粋)
中でも、
ある教会を管理する家で働く少女(先住民の子孫と思われる)と出逢うエピソードがあって、彼女はそこの息子にレイプされ身籠っているんですが、その教会がインカ帝国の首都クスコにあった太陽神殿を破壊して、その堅牢な土台の上に西洋文明支配のシンボルとして建てられたサント・ドミンゴ教会!これ気付いた時は唸ってしまいました。

1992年アルゼンチン, フランス合作.
音楽はピアソラがフランスの王立劇団コメディ・フランセーズの為に書き下ろしたシェイクスピア『真夏の夜の夢』の舞台音楽を再構成して使用。(オリジナルでないのはピアソラが脳梗塞に倒れた為です)
キャストで目を引くドミニク・サンダはマルティンの母親役。残念ながら出演時間は短いのですが、美しさは異彩を放っていました。

本作は内容に関する情報が非常に乏しくて、観るまではもっと観念的な内容を想像していたんですが、良い意味で裏切られました。政治色は弱くはないですが、その多くは上述したように間接的な表現が為されていて、観る者は成長していくマルティンと一緒に学習し考えさせられる様な、そんな作りになっていました。南米大陸の広大な自然と、そこに残る癒えることのない傷跡ー。
観られて良かったです。
継