虹島流浮

トラスト・ミーの虹島流浮のレビュー・感想・評価

トラスト・ミー(1990年製作の映画)
4.8
精神面の成熟への過渡期での出会いというものは、その後も深く心に残り続けるものです。

漫画のような大袈裟な演出を登場人物たちのさりげない行動として日常に落とし込むことで生じる”違和感”も、次第に慣れてそれを欲するまでの自分がいました。

彼らの抱える日常における悩める描写、落ち着いた表現と落ち着いた音楽は90年代の古き良き日本ドラマで味わった感覚に近く、『あすなろ白書』かよ!と思いました。
「Tomorrow Never Knows」を流しても違和感はありません。

主人公のお母さんが登場する度に画面が異様な雰囲気に包まれてホラー映画へと変わる。
まるで”血の出ない殺しのないスラッシャー映画”。ここも見どころの一つ。
終盤だったり時おり怖いことが平然と起きているのは『ヘザース(1989)』と重なるジャンルである。

主人公も歳を重ねてからこの映画を見ればコメディとして受け入れられることでしょう。
悲劇に直面して悲観しすぎることはあっても、いずれ落ち着いて対処できる能力が自然と身についているものです。
ぎこちない人生の歩み方には味がある。錆びない程度にメンテナンスをすればいい。

ハル・ハートリーの魅力が盛大に味わえる映画でした。お見事です。