みかんぼうや

トラスト・ミーのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

トラスト・ミー(1990年製作の映画)
3.7
なんとも言えぬ味わい。難しい家族関係、中絶、社会への不適合、といった本来であればかなり重苦しい話に仕立て上げられそうな内容なのに、作品全般を通じて感じる、シニカルでコメディックな演出が、重さよりもどこかオフビート感&クールさ溢れる唯一無二の雰囲気を醸し出す。

話は、妊娠し高校を退学になった女子高生と、論理的だが頭でっかちで職場の人間ともかみ合わず仕事を辞めてしまう男性が出会い、少しずつ惹かれ合う物語。

といっても、決して爽やかでキラキラしたラブロマンスではない。社会から“はみ出し者”のように扱われる2人は、それぞれがいわゆる“毒親”にも悩まされ生きづらさを感じる中で、共依存的に距離を縮めていく。そんな重めの話を、観客の共感を狙うのではなく、あくまで傍から見てどこかコミカルに楽しめる映画として描いたのは監督の手腕か。

その演出とともに、本作の最大の魅力は主人公の女子高生を演じたエイドリアン・シェリー。思春期の女子高生の持つ自分の考え方が正しいと思いながらも孤独や不安を感じる繊細さや不安定さをオープニングから見事に見せつける好演。どこかパンキッシュに見えつつも華奢でキュートな独特の魅力で目が離せない。

この作品の独特の雰囲気は彼女の存在感無くしては語れない。彼女の出演作品、多分初めて観ましたが、他の作品ももっと観てみたくなる素晴らしい演技でした。
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