富樫鉄火

恋の花咲く 伊豆の踊子の富樫鉄火のレビュー・感想・評価

恋の花咲く 伊豆の踊子(1933年製作の映画)
4.5
#2
活弁付きでは観ているが、完全サイレントでは初めて。
しかし、そのせいで、かえって本作の魅力が、よくわかった。

映画化された『伊豆の踊子』はすべて観ているが、美空ひばりと並んで、原作改変の本作が、いちばん良い。
そもそも原作は、実は学生が薫の兄に惚れたBL小説だと思っているので(だから最後に帽子やら何やらを贈る)、そのまま映画化すると、どうも半端になる。
よって本作のように、薫の縁談話を入れ込んでしまえば、ラストがわかりやすく、感動も増す。

絹代の庶民美ともいうべき可憐さはいうまでもないが、脇役が、みんなよい。
坪内ミキ子みたいな兄の妻・若水絹子が、なかなか味がある。
五目並べをやる与太者・阿部ショウも忘れがたい。
百合子役の兵頭静江は、むかしから気になっているのだが、数本しか出演記録がなく、いったい、どこのどんなひとなのか、知りたくて仕方ない。

観ている間に大地震があったが、本作で新年を迎えられて、よかったと思う。
富樫鉄火

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