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花つみ日記のzhenli13のレビュー・感想・評価

花つみ日記(1939年製作の映画)
4.5
ああ。きらきらと眩しく、もう一回観たい。儚い眩しさと重い軛が遜色なく同居している。

女学校の少女たちもデコちゃんも割とあけすけで遠慮がない感じが、嘘っぽくなくていい。「みつるさんが天国はあると言うなら私もあると思う」という会話や、冒頭での少女たちが歌いながら整然と群舞のように校庭を掃き清めるシーン、賛美歌の歌声を2人で肩を並べて教会の柵ごしに聴くようす等々、随所に胸が締め付けられるような吉屋信子らしさがある。

大阪は、現代のイメージと全く違う。多くがセットではなくロケのよう。
高峰秀子演ずる栄子の生家である茶屋は黒ぐろと長い軒の老舗らしい大店で、たくさんの芸妓たちが唄やおどりの稽古をしている。それもひとつの部屋だけでなくいくつもの部屋で稽古をしているようすを、パンでゆっくりと見せていく。
葦原邦子が住む家(下宿なのか?とても広く使用人が複数いる)の廊下を足袋で歩く足元なども丹念に映す。
または戎橋のシーン。道頓堀の雑踏の中を去る葦原を俯瞰で動的に捉えるショットはドキュメンタリーぽくてとても不思議だ。彼女の姿がほとんど人々に埋没するくらいまで追う俯瞰のロングショット。その姿を哀しげに見送る高峰のアップとの切り返し。
建物や群衆を含めた「いま」の大阪のようす。この数年後空襲によって抹消されることを予見し、フィルムに残そうとしていたのではないか。

余談だけど幼少から何度も行った信貴山とロープウェイが興味深く、境内のようすは自分が知ってる信貴山とあまり変わらず嬉しい。デコちゃんの丸顔に氷のうが切ないまでに愛らしい。
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