櫻イミト

夢去りぬの櫻イミトのレビュー・感想・評価

夢去りぬ(1955年製作の映画)
3.5
「絞殺魔」(1968)「10番街の殺人」(1971)と並び称されるフライシャー監督三大実話犯罪映画の1本。20世紀初頭の有名な美少女タレントにまつわる殺人事件の映画化。原題「The Girl in the Red Velvet Swing:赤いべルべットのブランコに乗った少女」。シャブロル監督「引き裂かれた女」(2007)のリメイク元。

1900年代初頭のニューヨーク。美少女タレントのイヴリン(ジョーン・コリンズ)は30歳以上離れた著名な建築家スタンフォード(レイ・ミランド)と恋に落ちる。一方で、大富豪の御曹子ハリーから執拗な求婚を受けていた。三角関係は遂に悲劇を呼ぶ。。。

豪華な美術衣装と色鮮やかな映像で美少女タレントの転落劇を描いていた。ロココ美術の代表的絵画「ぶらんこ」(1768フラゴナール作)を引用したと思われるブランコのシーンが素晴らしい。最初は“愛の始まり”、二度目は“愛の交わりの暗喩”、最後は“絶望と孤独”を表していた。

先に現代版にリメイクされた「引き裂かれた女」を観ていたので物語を追う楽しみは少なかったのだが、こちらは実話に沿った映画化なので殺人事件そのものへの関心を寄せながら観た。

イヴリン・ネスビットは当時アメリカで大人気だったモデル&踊り子で、モンゴメリが「赤毛のアン」(1908)の容姿のモデルとしたことでも有名。本作は彼女本人が考証協力し1906年に起きた“スタンフォード・ホワイト殺人事件”の顛末を再現している。

優しく純粋な娘が二人の大富豪との恋愛に心を引き裂かれる。悲しいほど美しいテクニカラーで繰り広げられる少女残酷絵巻。
櫻イミト

櫻イミト